200㎡以下の住宅で旅館業を始める前に知っておきたい建築士の証明書

「普通の住宅を、一棟貸しの宿にしたい」。こうしたご相談を多くいただきます。検討を進める中で、「200㎡以下なら用途変更の確認申請はいらない」と知った方もいるのではないでしょうか。

ただ、その広さだけで、今の建物をそのまま宿に使えるかは判断できません。旅館業を始める前には、宿として使う建物が建築基準に合っているかを確かめる必要があります。今回は、その確認に関わる「建築士の証明書」について書きます。

なお、この記事は旅館業法の許可を受けて営業する場合の話です。住宅宿泊事業法に基づく届出による民泊とは、分けてお読みください。

確認申請が不要でも建築基準の確認は必要

住宅を宿に使う場合、建築基準法上の建物の用途が変わります。一戸建て住宅や共同住宅からホテル・旅館、簡易宿所へ用途変更するときは、用途変更する部分の床面積の合計が200㎡を超えると、用途変更に係る確認申請が必要です。200㎡以下なら、この確認申請は不要です。[1]

大切なのは、確認申請が不要な規模でも、用途変更後の用途(旅館)での建築基準関係規定に適合する必要があることです。200㎡という数字は、建物の確認を省いてよい目安ではありません。また、判定するのは用途変更する部分の面積です。物件資料に書かれた延べ面積だけで結論を出さず、どこまで宿として使うのかを整理しましょう。

なお、用途変更に係る確認申請が不要でも、増築や大規模な修繕など、工事の内容によって別に建築確認が必要となる場合があります。[4]

2026年の国の通知と宮城県の取扱い

2026年5月28日、厚生労働省と国土交通省は、自治体に対し、旅館業の許可時に建築基準法への適合確認を徹底するよう通知しました。

この通知では、住宅などから宿へ用途変更する場合、用途変更する床面積の合計が200㎡を超えるときは「用途変更に係る確認済証」、200㎡以下のときは「建築基準関係規定に適合している旨の建築士による証明書」を求めるよう示しています。ここでは、後者を適合証明書と呼びます。[1]

宮城県でも、2026年6月改訂の旅館業の手引きに、用途変更の手続きが不要な規模の既存建物について、建築士による証明書を確認する旨が記載されています。県は参考様式も公開しています。[2][3]

この手引きの対象は、仙台市を除く宮城県内です。仙台市内の物件は、市の担当窓口に取扱いを確認してください。申請に向けて、管轄の保健所へ必要書類や提出時期を確認することが大切です。

証明書の準備は建物の確認から

適合証明書には、建築士が建物の適合性を判断できる根拠が必要です。所定の用紙に記入してもらうことだけを、開業直前にお願いするつもりでいると、準備が間に合わなくなるおそれがあります。

どの資料が残っているか、図面と現在の建物が合っているか、宿として使うために確認や改修が必要な部分はあるか。まずは、建物の状況を建築士に見てもらうところから考えたいものです。

私がご相談を受ける中でも、建築士との連携がなければ先に進めない場面が多くあります。建物の確認でつまずくと、調査や改修などの経費がかかることもあります。内装や設備の計画を固める前に、建築面の見通しをつけておくことをおすすめします。

物件を買う前や改修を始める前に

相談の準備として、手元にある平面図、建築時の確認済証や検査済証、増改築の履歴が分かる資料を集めてみてください。宿に使いたい範囲や予定する宿泊人数も伝えられると、計画を具体的に検討しやすくなります。資料が見つからない場合は、そのことも含めて早めに相談しましょう。

旅館業の許可には、建築のほか、消防や衛生面の確認も必要です。建築士への相談とあわせて、保健所や消防署などの関係窓口にも、計画段階から確認を進めてください。

一棟貸しの宿づくりを進めるうえで、最初に確かめたいのは、その物件で希望する営業ができるか、どのような準備が必要かという点です。購入や改修に費用をかける前の確認が、計画や予算を考える助けになります。

当事務所の「民泊・旅館業の物件事前調査」については、下記のページでご案内しています。建築士による調査や証明書作成については、対応の可否や依頼範囲、費用を別途確認する必要があります。物件を検討している段階から、ご相談ください。

民泊・旅館業の物件事前調査

※2026年10月10日時点の公表資料に基づきます。個別の建物や計画については、管轄窓口と建築士にご確認ください。

参考資料

[1]厚生労働省・国土交通省 2026年5月28日通知
旅館業の許可時における建築基準法への適合確認の徹底について

[2]宮城県 旅館業の手引き 第7版 2026年6月改訂 2ページ

[3]宮城県 建築基準関係規定の適合証明書 参考様式

[4]国土交通省 木造戸建の大規模なリフォームに関する建築確認手続について 7ページ