昨日まで普通の家だったのに、旅館にしたら「水質汚濁防止法」?
最近、旅館業許可のお手伝いをしていて、改めて「法律って面白いな」と思ったことがありました。
もともと普通の一軒家だった建物を、一棟貸しの宿にする案件です。
定員は5人程度。
大きなホテルでもなければ、温泉旅館でもありません。
普通の住宅にあるお風呂があって、台所があって、洗濯機がある。
この一軒家、旅館業の許可を取って営業することになると、「お風呂」「台所」「洗濯設備」が、水質汚濁防止法上の「特定施設」になります。
水質汚濁防止法施行令では、旅館業の用に供する
・厨房施設
・洗濯施設
・入浴施設
が特定施設として指定されています。環境省
素朴な疑問。
「今まで普通に家族がお風呂に入って、洗濯して、料理していたのに、宿にした途端にどうして水質汚濁防止法の対象になるんですか?」
定員5人の一棟貸しなら、住宅として5人家族が暮らしていた場合と比べて、水の使用量が劇的に増えるとも限りません。
設備そのものも同じです。
それでも、住宅から「旅館業を営む事業場」に変わることで、法令上の扱いが変わります。
法令上の扱いはそうですが、何となく腑に落ちない。
ポイントは「汚れた水がどこから出るか」だけではなかった
水質汚濁防止法という名前からすると、
「厨房やお風呂から出た汚れた水が、川などに流れないようにする法律」
というイメージを持ちます。
もちろん、それは大きな目的の一つだと思います。
ただ、法律の構造を読むと、もう少し広い仕組みになっています。
法律上の「排出水」は、
特定施設を設置する事業場から、公共用水域に排出される水
とされています。環境省
つまり、「特定施設から直接出てきた汚水」だけを見ているわけではありません。
特定施設がある「事業場」という単位で、そこから公共用水域へ出ていく水を捉えています。
下水道につながっていれば、水質汚濁防止法ではない?
特定施設(台所、お風呂、洗濯機)からの排水は公共下水道に接続。
汚水は下水道施設で処理されるので、水質汚濁防止法の届出不要、とおもいきや、雨水の排水経路の関係から、水質汚濁防止法の届出が必要とのこと。
ここで、疑問。
生活排水については下水の処理施設にて適切に処理されている。
公共用水域に出ていくのは、例えば敷地に降った雨水だけ。
それでも、その敷地に「特定施設」があることで、水質汚濁防止法上の届出が必要になる。
法律上の「排出水」が、特定施設から出る汚水そのものではなく、「特定事業場から公共用水域へ排出される水」と定義されているためです。
普通の一軒家を定員5人の宿に転用するケースで考えると、
「庭に降った雨水って、公共水域を汚染するの?」
という疑問が残ります。
実は「民泊」は見直されている
この点がさらに興味深いところです。
住宅宿泊事業法に基づくいわゆる「民泊」については、以前は旅館業と同様に厨房・洗濯・入浴施設が特定施設として扱われていました。
ところが、規制改革の検討を受け、2020年に水質汚濁防止法施行令が改正され、住宅宿泊事業に使われるこれらの施設は特定施設から除外されました。環境省
つまり、
「一般住宅と実態があまり変わらない小規模な宿泊サービスまで、従来型の旅館と同じ規制でよいのか」
という問題意識自体は、国でも一度検討されているわけです。
ところが、旅館業法の許可を受ける一棟貸し宿などは、同じような住宅規模であっても、この除外には入りません。
ここには少し面白い制度上の境界があります。
同じ家、同じお風呂、同じ台所、同じ人数でも、
「住宅として使うのか」
「住宅宿泊事業として使うのか」
「旅館業法の許可を取って営業するのか」
によって、適用されるルールが変わってきます。
旅館業という業の許可を取得することで、水質汚濁防止法だけではなく、建築基準法上も別の扱いとなります。
よく民泊と旅館業でどう違うの?と聞かれることがありますが、根本はこのあたりなのかなと思っているところです。
個人的には、旅館業でも定員数とや面積要件などの基準を設けて、現状の一棟貸しスタイルの旅館については、水質汚濁防止法の規制は緩和してもよいのでは?と感じています。
規制緩和、実現しないかな。。。


