住宅宿泊事業法の民泊届出で悩む「消防法令適合通知書」の取得方法
民泊を始めたいと考えて、ご自身で住宅宿泊事業の届出をしようと準備を進めている方も多いのではないでしょうか。その中で、多くの方が「どうしよう?」と考えてしまうのが「消防法令適合通知書」の取得です。
今回は、この消防法令適合通知書について、特に図面の準備や誘導灯免除の判定など、実務上の難しいポイントを詳しく解説します。
消防法令適合通知書とは
消防法令適合通知書とは、民泊施設として使う建物が消防法令の基準に適合していることを証明する書類です。住宅宿泊事業の届出をする際に、必ず添付しなければなりません。
なぜこの書類が必要かというと、民泊は不特定多数の方が宿泊する施設であり、万が一火災が発生した場合に安全に避難できる環境を整えておく必要があるからです。消防署がこの適合性をチェックし、問題がなければ通知書を交付してくれます。
消防法令適合通知書の取得の流れ
基本的な流れは以下の通りです。
- 管轄消防署への事前相談
まず、物件の所在地を管轄する消防署に相談に行きます。建物の概要や民泊の規模などを伝え、必要な消防設備や図面について確認します。 - 必要書類・図面の準備
図面や建物の情報を準備します。ここが最も時間がかかり、難しいポイントです。 - 消防法令適合通知書の申請
準備した書類を消防署に提出し、審査を受けます。 - 現地確認
消防署の職員が現地を確認することがあります。 - 消防法令適合通知書の交付
問題がなければ、通知書が交付されます。
必要な図面の種類
基本的には以下の図面が必要になります。
- 各階平面図:建物の各階の間取りを示した図面
- 立面図
- 配置図:敷地内での建物の配置を示した図面
- その他消防から求められる図面:建物の構造や規模により異なります
図面に記載すべき重要な情報
図面には、単に建物の形を描くだけでなく、消防法令の判定に必要な情報を記載する必要があります。
1. 窓の寸法(普通階・無窓階の判定のため)
消防法では、「普通階」と「無窓階」という概念があります。無窓階とは、避難や消火活動に有効な開口部が少ない階のことで、無窓階に該当すると消防設備の要件が厳しくなります。
この判定のために、窓の寸法を正確に記載する必要があります。具体的には、開口部の面積が床面積の1/30以上あるかどうかを判定するため、窓の幅と高さ、そして床面からの高さを測って記載します。
新しい物件の場合は、建築時の建具表や図面があればそれを使えます。
古い物件の場合が問題です。建具表がないケースが多く、実際に窓を測らなければなりません。高い場所にある窓を測ったり、複数の窓の寸法を全て記録したりする作業は、一般の方には大変な負担です。
2. 消防設備の配置
図面の中には、消防設備の配置図も準備する必要があります。
- 消火器の配置:各階のどこに設置するか
- 火災警報器(感知器)の位置:煙感知器、熱感知器の設置場所
- 誘導灯の位置(設置が必要な場合)
3. 避難経路の記載
どの経路で避難するのかを図面に示す必要があります。ここで重要なのが、次にお話しする「避難経路の落とし穴」です。
よくあるつまづきポイント
避難経路と窓の位置関係
実際にあった事例をご紹介します。
ある民泊の届出で、玄関から外に出て敷地内の通路を通り公道へ避難する計画でした。消防署に相談したところ、「この避難経路の途中に建物の窓がありますね。火災時にこの窓から火や煙が出た場合、この経路が使えなくなるのでは?」という指摘を受けました。
消防法令では、建物の外に避難した後、建物の開口部(窓など)から3メートル以内の部分を通らずに安全な場所へ避難できることという要件があります(消防庁「民泊における消防用設備の設置について」より)。
この事例では、避難経路が窓の近くを通っていたため、図面上で「窓から3メートル以上離れた経路で避難できる」ことを示す必要がありました。具体的には、窓の位置を記載し、そこから3メートルの範囲を避けた避難経路を線で描き、距離を記入することで対応しました。
このように、避難経路は単に「外に出られればOK」ではなく、火災時の安全性を考慮した計画が求められます。
誘導灯の免除要件の判定
もう一つの大きなポイントが、誘導灯の設置が必要かどうかの判定です。
誘導灯は電気工事が必要なため、設置するとなると消防設備業者への依頼が必須となり、費用も大きく変わってきます。できれば免除を受けたいところですが、この判定が非常に複雑です。
誘導灯免除の主な要件(一戸建て住宅の場合)
消防庁のリーフレットによると、一戸建て住宅で民泊を行う場合、以下のような要件を満たせば誘導灯の設置が免除されます。
避難階(1階)の場合:
- 各居室から簡明な経路で容易に避難できること
- 建物の開口部から3m以内を通らずに安全な場所へ避難できること
- 避難経路図を見やすい位置に掲示するなど、避難口の位置を理解できる措置を講じること
2階以上の階の場合:
- 各居室から簡明な経路で容易に階段へ到達できること
- 廊下等に非常用照明装置を設置すること
- 避難経路図の掲示など、避難口の位置を理解できる措置を講じること
判定を誤ると大変なことに
「うちは免除を受けられる」と思って届出を進めたものの、実は誘導灯が必要だったというケースがあります。そうなると、
- 消防設備業者への依頼が後から必要になる
- 追加の費用が発生する
- 設置工事のスケジュールが必要になり、営業開始が遅れる
といった問題が起こります。
事前に正確に判定しておくことが非常に重要です。
「自分でできるかな?」と不安に思われたら、まずは専門家に相談してみることをお勧めします。初回相談だけでも、今後の進め方が明確になり、無駄な時間や費用を避けることができます。
当事務所では、民泊の消防法令適合通知書取得から住宅宿泊事業の届出まで、トータルでサポートしています。宮城県内で民泊開業をお考えの方は、お気軽にご相談ください。

